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遺言の失敗事例

  • 文責:弁護士 寺井渉
  • 最終更新日:2024年2月27日

1 遺言の失敗事例について

遺言については、相続開始後に失敗が発覚したとしても、遺言を修正したり補充したりすることはできませんので、失敗をカバーすることはできず、取り返しのつかない事態が生じてしまいます。 遺言を作成するにあたっては、弁護士等のチェックを受けて、失敗のない遺言を作成することが必要不可欠であるといえます。 ここでは、遺言の失敗事例をいくつか紹介したいと思います。

2 相続させるものとされていた預金が残っていなかった事例

この事例では、遺言を作成した人の身の回りの世話をしていた相続人に対し、「●●銀行の預金を相続させる」という遺言が残されていました。

遺言を作成した人は、預金の大部分を●●銀行に預金していました。

このため、遺言を作成した人は、将来、預金の大部分を、身の回りの世話をしていた相続人に引き継ぐことができると考えていました。

しかし、その後、遺言を作成した人の判断能力が低下し、成年後見人が選任されることとなりました。

成年後見人は、遺言の存在を知る機会がなく、裁判所の指示に従い、●●銀行の預金を、成年後見制度支援信託に組み入れました。

そのため、●●銀行の預金は、相続開示時点では、残高が0円になってしまっていました。

このため、遺言を作成した人の身の回りの世話をしていた相続人は、遺言によっては財産を取得することができず、相続分に基づく主張を行うことができたに過ぎませんでした。

このような事態を避けるためには、「すべての預貯金を相続させる」といった、包括的な条項を設けるのが望ましいと考えられます。

3 相手方が居住している不動産も取得するものとされてしまった事例

この事例では、相続人は子であるAとBの2名で、Aが居住する不動産(評価額1000万円)、Bが居住する不動産(評価額1000万円)、預貯金(2000万円)が相続財産として残っていました。

遺言を作成した人は、相続人Bとの関係が悪く、「遺言者の有するすべての財産を相続人Aに相続させる」という遺言を残して亡くなりました。

遺言の存在を知ったBは、Aに対し、自分が法的に取得できるはずの遺留分を侵害されたとして、遺留分侵害額請求を行いました。

Aは、Bが居住する不動産を取得する実益がないと思ったこと、Bが居住する不動産がBの遺留分額とほぼ同額であったことから、Bの居住する不動産を、自分ではなくBが取得するという方向での解決を望みました。

Bも、Aの提案に同意し、遺留分として、BがBの居住する不動産を取得するという合意書が作成されました。

ところが、合意書作成後に税理士に相談したところ、Aは、譲渡所得税、住民税を納付しなければならないということを知りました。

しかも、譲渡所得税、住民税の金額は、不動産の価格の約2割、つまり、約200万円にのぼるとのことです。

なぜ、このような事態が生じてしまったのでしょうか。

遺留分の制度は、令和元年に法改正がなされました。

現在の法律では、遺留分の権利者であるBは、Aから、遺留分に相当する金銭の支払を受けることができるとされています。

このため、Bが遺留分として不動産を取得する場合は、Aが金銭の支払の代わりに不動産を譲渡したという評価がされてしまいます。

つまり、金銭の代わりに不動産を譲渡することは、金銭の代わりに別の物で支払うという代物弁済と同様の扱いがなされてしまい、Aに譲渡所得が発生したと扱われてしまったというわけです。

この事例では、令和元年に法改正がなされた時点で、遺言を作成した人が、遺言の内容を見直し、遺言の書き換えを検討した方が良かったといえます。

このように、遺言については、法改正により、その後の取り扱いが大きく異なってくることがあります。

法改正があった場合には、遺言の内容を再検討するのが望ましいといえます。

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